この記事の解説事項
●2種類以上の絵柄を使い分けつつ、仕事はできるのか?
●絵柄を描き分けることのメリット&デメリット
無印かげひと(@kage86kagen)です!
現在ゴールデンウイーク期間中ですが、みなさんはどうお過ごしでしょうか?昨年に引き続きこのご時世のため、家で過ごす方が多いと思いますが、来年こそは気兼ねなく過ごしたいものですね。
そんなお休み期間中ではありますが、今日は「イラストのお仕事」に関する話をしていこうと思います。
イラストを生業としている方の中には、「可愛いイラスト」+「かっこいいイラスト」だったり、「落書き風」+「リアル寄り」などといった、複数の絵柄を使い分けている方がいらっしゃいます。


などなど…、1つの絵柄で描いている人にとっては、様々な疑問が浮かぶと思います。
そこで今日の記事では、「複数の絵柄で仕事できるのか?」という疑問に対し、イラストレーターが8ヶ月間己の体で実験してみました。
絵柄を複数使い分けて描くことに関して、おそらく複数使いわけていても仕事がもらえるのか?といったことについてが一番気になるところだと思います。こちらをメインに紹介しつつ、補足として絵柄を描き分けることでのメリット&デメリットも紹介していこうと思います。
それでは、いってみましょう!
もくじ
絵柄を使い分けるとは?

「絵柄を使い分ける」というのは、冒頭でも説明したように、
- 「可愛いイラスト」+「かっこいいイラスト」
- 「落書き風」+「リアル寄り」…などといった、
極端にかけ離れている絵柄を描き分けることを言います。
ですので、「萌え系絵柄」で描いている方がこの絵柄のままで「かっこいい雰囲気のイラスト」、「退廃的なイラスト」を描いたとしても、それは「絵柄を使い分けている」わけではなく、どちらかというと「雰囲気を描き分けている」といえるので、ここでは絵柄が極端にかけ離れている事についてお話します。
もしかすると、1つの絵柄に絞って描いている方からは、
「絵柄を使い分ける?そんな器用な人いる?」
「そんなにはっきり絵柄を分けられる?」
こんなふうに不思議に思う人もいるかもしれませんね。実際、1つの絵柄のみで描く方が8割~9割ぐらいだと思うので、2種類以上の絵柄で描いている人は稀有な存在に見えるかもしれません。
でも、実際に絵柄を2種類以上描き分けて活動されている方もいます。私もそのうちの1人だったりします。
絵柄を使い分ける理由

「なんで絵柄を分けているの?」という理由について説明しますが、他の方の意見や私の考えなどを参考にして、以下の通りに書き記してみました。
単純に色んな種類のテイストを描いてみたいから
生粋の「趣味仕事問わずお絵かき大好きマン」の中には、とにかく色んな表現をしたい!という思いが強すぎてしまい、
- 様々な絵柄や道具を使って絵を描く
- そうしていたら、自然と絵柄が分裂した
…みたいな事象が発生している人もいるみたいです。
小さい頃から絵を描いていた私も同様で、様々な描き方を試しているうちに、しまいには新しい絵柄を開発して楽しんでしまうほどです。
仕事の幅が広がりそうだから
絵柄を描き分けることができると、仕事のジャンルを広げることも可能になります。例えば、「ライトノベル風の萌え系イラスト」での仕事を引き受けつつ、「しっかり系ビジネス会社向けのかっちりイラスト」を手掛けることができたりとか…。
こうしておけば、例え片方の仕事が途絶えてしまったとしてももう片方で食いつないでいく…といった活動の仕方をすることもできます。
私もフリーランスイラストレーターを始めた最初の頃は、「1種類の絵柄で描くか」、「複数の絵柄で描いてもやっていけるのか」ということについて非常に悩みました。
最終的に、気持ちとしては複数の絵柄で描いてみたいという思いが強かったので、思い切って複数の絵柄で仕事を始めることにしました。
本当は、同じような感じで複数の絵柄で活動しているイラストレーターさんをロールモデルにしたかったのですが、そういった方になかなか出会うこともできませんでしたので、ほぼ自分で模索しながら活動してきました。
実際に8ヶ月間実験してみた

ロールモデルが無いなら自分でやるしなかい!
ということで、「複数の絵柄を使い分けて、どこまでどれだけ活動できるのか」ということについて、実際に人体実験をしてみることにしました(笑)
イラストレーター開始日である2020年8月から、2021年4月までの8ヶ月の期間を記録していますので、月ごとの絵柄の活動内容を簡単に紹介していきたいと思います。
1ヶ月目
イラストレーター1ヶ月目。最初はなんと4種類の絵柄で仕事を開始しました。今思えば無謀で狂気の沙汰です。
絵柄の内訳は、
- アニメやゲームのようなテイスト
- シンプルでビジネス向け
- ゆるキャラ系
- 筆、墨汁テイストで描いたイラスト
この4つの絵柄でスタートしました。
で、初めて1ヶ月後、早々に「ゆるキャラ系」と「墨、墨汁テイスト」の2種類の絵柄を切り捨てることになります。
なんで早く見切りをつけたかというと、「絵柄が描き分けられない!」…というわけではなく、「単純に、描いていて面白味に欠けていたから」というのが理由です。
切り捨てた絵柄は、「描けるけれど、本心は描いていて楽しくないのかもしれない…」と気づいたので、この絵柄で仕事を受けることは早々に諦めることにしました。
イラストレーター転身後、初めてお仕事を貰ったのが「墨、墨汁テイスト」の絵柄でしたので、いささか心残りはありましたが…。
波乱の幕開けになりましたが、実験1ヶ月目は絵柄の種類を「4種類」→「2種類」体制に変更し、2種類の絵柄で営業していくことになります。
2ヶ月目
そういうことで、2ヶ月目以降は「アニメ風テイスト」と「ビジネス風テイスト」の2種類の絵柄に絞って営業を行っていきます。
すると、「アニメ風テイスト」の絵柄の方でポツポツとお仕事を頂けるようになりました。対して、ビジネス風イラストでの仕事はあまり頂くことはありませんでした。
3ヶ月目
イラストレーター3ヶ月目は形勢が逆転。今度はビジネス風イラストでの仕事の回数が多くなります。
ビジネス風イラストは、アニメ・漫画風イラストと比べると短時間で描くことが出来たので、この期間は枚数が多い案件を複数頂くことができました。
4ヶ月目~
その後、どちらの絵柄でも比較的お仕事の件数を頂くようになり、現在は「アニメ風:ビジネス向け=1:2」の割合でお仕事を頂いています。ただ、ここ最近は比率が1:1になりつつあります。

絵柄を使い分けた結果
さて、8ヶ月間人体実験を行ってきましたが、結果的に「頑張れば、2種類の絵柄を描き分けて活動できなくもない」ということが分かりました。四苦八苦しましたが、2種類の絵柄でも意外とお仕事できるものですね。

この実験中、複数の絵柄で描く事でのメリット&デメリットも体験することができました。2種類以上の絵柄でお仕事を考えている方のためにまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください!
絵柄を使い分けることのメリット

・お仕事獲得率があがる
2種類以上の絵柄で描くメリットは、これが一番だと思います。
2つの絵柄を描き分ける=すなわち「イラストレーター2人分」としてお仕事しているような感覚ですから、営業で上手く立ち回っていけさえすれば、お仕事の獲得率も2倍が見込めます。
・ポートフォリオが2種類作れる
2種類の絵柄を持っていると、営業で使用するポートフォリオも2種類制作することができます。営業先が求めている絵柄に合わせてポートフォリオを提出することができるので、この方法を行うことでも仕事の獲得率が上がります。
・長時間作業でも飽きにくい
いくらイラストレーターであっても、長時間お絵かき作業をしていると途中で飽きてしまいます。ですが、2つ以上の絵柄を持っている場合、片方の絵柄の制作作業に飽きてしまったら、もう片方の絵柄で作業を進める…といった器用な事もできます。
これは人によると思いますが、別の絵柄で作業することがいい気分転換になり、結果的に長時間作業を続けることができたりします。
・「オワコン」をある程度防げる
「オワコン」とは?・・・一時は栄えていたけど、今ではブームが去ってしまったコンテンツのこと。「終わったコンテンツ」を略して「オワコン」。
2種類以上の絵柄を描き分ける事により、ある程度オワコンを防ぐことができるかもしれません。これは、2種類以上で描いている方の中でも「絵柄が真逆」の人であればあるほど効果があると思います。
少し難しい話になりますが、あえて真逆の絵柄で描き続けることで、常に「真逆の価値観」をとらえることができます。
その結果、人よりも絵柄の流行に敏感になることができ、その流行に合わせた絵柄へと改編しやすくなかもしれません。結果的に、絵柄を流行に合わせる事ができ、将来も仕事が途絶えにくくなる…といった流れを築くことができるかもしれません。
この「オワコン」話については、最近発売された下記の書籍にも掲載されていますので、気になった方はぜひ参考にしてみてください。
絵柄を使い分けることのデメリット

「2種類以上の絵柄を描き分けること」について魅力的な部分を紹介してきましたが、もちろんデメリットも存在します。
・絵柄を覚えてもらいにくくなる
イラストレーターにとっては割と致命傷な話になりますが、複数の絵柄で描けば描くほど、「○○を描いている人といえば○○さんだ!」といったような周知がされにくくなります。
個人や企業の方がイラストレーターに仕事を頼む場合、「ドラゴンを依頼するなら、○○さんがうってつけだ!」というような考えで頼み込む場合が多いです。
2種類以上の絵柄を持っている場合、「○○と○○の2つの絵を描くイラストレーターは○○さんだ!」といった認知をしてもらうには、有名なイラストレーターでない限りは厳しいかもしれません。個性的な絵柄であればまた違ってくるかもしれませんが…。
実はこれに対する解決方法があるのですが、それは「別名義で活動する」という方法です。
- 「アニメ・漫画風イラスト」→無印 かげひと 名義
- 「ビジネス向けイラスト」→コーヒー 名義
上記のように名義を使い分ければ、「○○のイラストといったら「無印かげひと」だ!」といったように、絵柄=イラストレーターで認知されやすくなります。
ただ、名義の管理は少々面倒になるかもしませんが、複数の絵柄で描く人はこの手段も視野に入れておいた方がいいでしょう。
・別絵柄を描く時の頭の切り替えがしにくい
複数の絵柄で描いていると、絵柄の切り替えがしにくい時もあります。
どういうことかというと、さきほどまで「少年漫画風」のイラストを描き、次に「水彩風の淡い風景イラスト」の制作に移るといった場合、「少年漫画風」のテイストを引きずったまま水彩風を描くといった事象も起こりやすいからです。
そうなると、絵柄の描き分けどころではありません。下手すると、「なにこの力強い水彩風イラスト。うちはこんなテイストを依頼した覚えはないんだけど。」と、クライアントに苦言を言われる可能性も出てきます。
複数の絵柄で描く方は、こういった点についても気を付けないといけませんね。
・画力が極められない
こちらも大きいデメリットです。複数の絵柄を持っていると、当然1つの絵柄にかける時間も分散されることになり、結果的に絵柄を極められなくなるという事に繋がってしまいます。
将来、ずっと2種類以上の絵柄を使い分けていくつもりであれば、人よりも倍以上の製作時間(練習時間)を設けるか、もしくは絵柄が軌道に乗った後にもう1つの絵柄を開発していく、と言ったスタンスを取ると効率がいいかもしれません。
「器用貧乏」にならないように

2種類以上の絵柄を描けることは非常に魅力的なスキルですが、上手く扱わないと「諸刃の剣」な面もあります。「色んなテイストの絵を描きたい!」というよほどの強い思いが無い限り、続けることが難しいスキルでもあります。
現在、私も2種類の絵柄でお仕事を頂いている状態ですが、将来を考えるといずれはどちらかを切り離す時が来るかもしれませんね。
趣味で描く方であれば問題無いスキルだと思いますが、「複数の絵柄」を操りイラストレーターとして仕事を行おうと考えている方は、よくよく検討した上で導入することをおススメします。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、「複数の絵柄で仕事はできるのか?」といった内容についてご紹介してきました。
1つの絵柄でしか描いていない方にとっては魅力的に聞こえるスキルですが、上手く扱わないと「諸刃の剣」な面があります。これに加えて、仕事が軌道に乗っていない時に「複数の絵柄」で営業していくと、逆に仕事が得られない、なんてことも…!
2種類以上の絵柄でどうしても活動していきたい!と考えている方は、「別名義で活動する」という方法もありますので、こちらも覚えておいて頂ければ幸いです。
便利なスキルだけど、デメリットも多い「絵柄の描き分け」…。ひとまず、「頑張れば、2種類の絵柄を描き分けて活動できなくもない」ということが実験で分かりましたので、ぜひ参考にしてみてください。
最後までご覧いただきありがとうございました!
それでは!