イラスト技法&練習方法

自分の絵柄が定まらない方向けのアドバイス

この記事の解説事項

●「自分の絵柄が定まらない!」という方へのアドバイス
●「絵柄」とは何か?
●イラストレーターの働き方によって、絵柄を定めるべきかどうかについての解説

かげひと
かげひと
こんにちは!
MVを作っている、イラストレーター兼動画クリエイターの無印かげひと(@kage86kagen)です!

絵描きのみなさんにご質問ですが、「自分の絵柄はこれだ!」と言えるような絵柄はお持ちでしょうか?

自分の絵柄を売りにしていきたい絵描きさんの場合、一目見て自分が描いたと分かるような絵柄を持つことに憧れる事だと思います。実際、有名なイラストレーターさん達のイラストは、一目見て「○○さんだ!」と分かるような絵柄ばかりです。

そんな絵柄を目指したいのは山々ですが、「自分の絵柄が定まらないよ…」と悩んでいる方も多いかもしれません。特に、イラストを描き慣れてから数年経つ方のほうが、悩まれる率が多いと思います。

そこで今回は、「自分の絵柄が定まらない方向けのアドバイス」ということで、「そもそもイラストの絵柄とは何か?」「自分だけの絵柄の見つけ方」…などについてを紹介したいと思います。

  • 自分の絵柄を探したい方
  • 自分の絵柄が決められない方
  • 参考にしている作家さんが多すぎて、それに引っ張られて毎回描くイラストの絵柄もバラバラな方

…など、自分の絵柄について悩んでいる方は、ぜひご参考ください!

「自分の絵柄が定まらない」

そもそも、「自分の絵柄が定まらない」というのはどういう状態の事を指すのでしょうか?まずはここから紐解いていきたいと思います。

まず、「絵柄」の意味を説明すると、「自分が描く絵の雰囲気」、「自分が描く絵のタッチ」という意味が一般的に広まっています。

しかし実は、本来の意味は「自分が描くタッチ」ではなく、「絵の構図」や「絵の模様」の事を指します。ですが、世間では「絵柄=自分の作風のタッチ」で使用されることが非常に多いので、この記事で出す「絵柄」は「自分の作風のタッチ」の意味で使用していきたいと思います。

絵柄 (読み)えがら

絵のがら。絵の構図、模様、素材のとり合わせなど。また、それから受ける感じ、味わい。工芸品、衣服などについていうことが多い。

引用元:コトバンク

かげひと
かげひと
雑知識です。

話を戻しますと、「絵柄が定まらない」を言い換えれば「自分の描くイラストの雰囲気やタッチが定まらない」という事になります。

例えば、昨日は「ワンピース」のような少年漫画&コミカルな画風でイラストを描いていたけれど、今日は「カードキャプターさくら」のような少女漫画&キラキラなイラストを描く…といった感じです。

ここまで極端とはいかなくても、同じ少年漫画系統など「同じジャンルの枠内」で絵柄がブレるほうが割と多いかもしれません。

中には、あえて絵柄を変えることを楽しんでいる方もいますが、大抵の方は「自分だけの絵柄を定めていきたい」と思っていることでしょう。

かげひと
かげひと
この悩みは、イラストを描き始めて間もない方よりも、イラストを描き始めてから1~3年ぐらい経つ方の方が、悩んでいる率が多いと思います。
コーヒーさん
コーヒーさん
イラストを描くことに慣れた人にありがちな悩みなんだね。

絵柄を定めるべきかどうかは「働き方」による

趣味ならまだしも、仕事でイラストを描いていく時にも”絵柄”は定めた方が良いの? 」と思う方もいるかもしれませんが、これは「イラストレーターとしての働き方の方向性」によって、絵柄を定めるべきかそうじゃなくてもいいかが変わってきます。

それを説明する前に、「イラストレーターの働き方」について簡単に紹介します。

実は、イラストで仕事をしていく時には、おおまかに2パターンの働き方が存在します。

1つは、絵柄を決めてそれを売りにする「アーティスト寄り(作家)のイラストレーター」、もう1つは依頼者の希望に合わせて絵柄を変更(又は多少変更)していく「商業イラストレーター」です。

今回の記事からズレるので端折りますが、この違いについてすごく詳しく説明されている記事がありますので、こちらもぜひご参考ください。

作家性を売りにしてる自分の絵を売りたい人と、お客様さんの要望を形にする商業イラストレーターの市場は結構異なる。

別々の絵で両方やる達人もいるけど、駆け出しの人の多くは前者っぽいのに後者の市場で営業しようとするから苦戦してるように見える。

引用元:トラノスケ note
(https://note.com/to_ranosuke/n/n518c67e87948)

先ほどの話を踏まえると、この場合は特に「アーティスト寄り(作家性)のイラストレーター」として働きたい方が、絵柄を定めて仕事をするべきです。

なぜかというと、作家性イラストレーターの場合は「自分の絵柄」とイラストの売り上げが直結するからです。絵柄が定まっているか否かで収入や仕事をもらえる率が変わってきますので、なるべく早めに自分の絵柄を確立していく必要があるのですね。

ちなみに、イラストレーターや絵師として活動に憧れていて「現時点で趣味でイラストを描いている人」達は、おそらくほとんどの方が「アーティスト寄り(自分の絵柄を商品にしてイラストを描く)」としての目標を抱いていると思います。

コーヒーさん
コーヒーさん
イラストコミュニティサイトやSNSを見てみると、「自分のイラスト(絵柄)で有名になりたい!」と掲げている人がかなり多いもんね。

なぜ絵柄を定めた方がいいの?

先ほど、特に作家イラストレーターを目指される方は「絵柄を定めた方が良い」とお伝えしましたが、これには以下の理由があるからです。

  • この絵は○○さんという印象付けになるから
  • その絵柄で描き続ける事によって「○○を描く人」という肩書きができ、その分野から仕事が来るようになるから
  • 自分が売り込みたいターゲット先を的確に定める事ができるから

前文でもちらっと出しましたが、この道を選ばれる方は「自分の作風(絵柄)」が仕事にめっちゃ関わってきます。そのため、自分の絵柄(○○な雰囲気で描いていくという目標)を早めに見つけ出し、確立させ、コツコツ描いたり売り込みしたり…などをしていくべきです。

3つ目の「自分が売り込みたいターゲット先を的確に定める事ができるから」を詳しく説明すると、例えば、

  • ほんわかした雰囲気でスイーツを描く系のイラストで売り込みたい→それなら、お菓子系のお店、雑誌、その他お菓子に関するコンテンツに売り込む
  • 人気ソシャゲによくある「煌びやかで描きこみ量が多い、美少女ゲーム系イラスト」の絵柄で売り込みたい→それなら、その系統のイラストを扱っているゲーム会社、サブカル系の雑誌、あるいはVtuberのキャラクターデザインに自分を売り込んでいく

上記のように、自分が描いていきたい絵柄に合わせて、営業先(売り込み先)をピンポイントに定める事ができます。

かげひと
かげひと
たまに、「ほんわかお菓子系イラスト」の絵柄で活動していきたいのに、「美少女系ソシャゲ」の会社や美少女イラストを欲している個人活動者に売り込んでいく…という凡ミスをしてしまう方も見かけます…
ワインさん
ワインさん
「そんなことないでしょ!」と思われるかもしれませんが、駆け出しイラストレーターのSNSの呟きを拝見すると、意外とこれをやっている方が多かったりします。

絵柄を決めたい方へのアドバイス

ではここからが本題ですが、「イラストの絵柄を決めたい!」と思う方へのアドバイスをいくつか紹介していきたいと思います。

  • 一番始めに目標を定める
  • 参考にする作家を定める
  • 視聴者の反応を伺う

一番始めに目標を定める

自分の絵柄を模索する前に、まずは自分がどんな絵柄のイラストを描いていきたいのかという「目標」を、ある程度きっちり定めていくことが大事です!

例えば、「少年漫画風の絵柄で描きたい」、「老若男女に広く愛されるような、マスコット風な絵柄を自分のものにしていきたい」、「ぱっと見でどんな様子なのかが伝わるような、シンプルで分かりやすいイラストを描いていきたい」などなどです。これは明確であればあるほど、絵柄の確立にかけるスピードが速くなります。

こういった目標をあらかじめ掲げておくことによって、「今自分はどんな絵柄を目指しているんだっけ…?」と悩んだ時の”道しるべ”になります。そうすれば、途中で寄り道や脱線をすることなく、自分だけの絵柄を構築していけます。

コーヒーさん
コーヒーさん
何事においても、目標を決める事って本当に大事なんだね。見切り発車でいくよりも安定感がある。

もちろん、目指したい絵柄の目標を途中で変更することも自由です。ですが、数日~数十日おきにコロコロ変えてしまうと、その分自分の絵柄が確立できる日も遅くなりますし、そもそも「自分はなんでこんな絵柄で描きたかったんだっけ?」という”そもそも論”にたどり着いてしまうこともあります。

最悪の場合、イラストを描く事自体の真価を問うところまで落ちちゃう可能性もあります。(そうなると、絵描き仲間が減ってとても寂しいです…)

ですので、一度目標を設定したら、長期間(半年以上など)はなるべくその絵柄を続けて描いてみてください。長期間描くことで「お、この絵柄が描いていて一番楽しいかも!」と確信するかもしれませんし、「やっぱり合わないな…。違う絵柄を模索してみよう」といったように”しっかりと諦める”こともできます。

この目標を設定した上で、次に説明する「参考にする作家」を決めていきましょう。

参考にする作家を定める

次に、自分の絵柄を構築する手助けとなる「参考にする作家(イラストレーターや絵師、漫画家など)」を決めていきましょう!

意外と認識されていませんが、「自分の絵柄」というのはある日突然生まれてくるものではありません
必ず誰かのイラストを参考にし、それを踏まえたりかけ合わせたりして、自分の絵柄を構築していきます

好きなアニメ、ラノベ、SNSに投稿されているイラストなど、自分が気になった絵柄を組み合わせて自分の絵柄を生み出していく…というのが世の理です。

ワインさん
ワインさん
言われてみるとそうですよね。自分が描くイラストって、必ず誰かのイラスト、絵柄を参考にしていますよね。

このように他の方のイラストを参考にする方がほとんどだと思いますので、自分の絵柄の方向性を決めたら、「参考にする作家(イラストレーター、絵師など)」も定めていきましょう。

気を付けて欲しいのが、参考先を1人だけにしてしまうとその方の絵柄に大きく依存してしまう場合がほとんどです。「その方の大ファンだから、この人しか参考にしない!」というのであれば構いませんが、可能であれば2~3人以上の作家を目標として設定すると良いです。

目標を設定したら、その作家達の「目の描き方」、「手の描き方」、「表情」、「イラストの構図」、「色合い」、「背景」などを細かく観察し、「自分もこういう表現がしたい!」と思ったのであれば、その都度自分の絵柄に取り込んでいきます。

これを長期間続けていくと、いずれは参考作家のイラストを参考にせずとも、自然とイラストを描くことができるよになります。それが「自分の絵柄」です。

よく勘違いされがちですが、他の方のイラストを参考にすることは全然悪い事ではありません!むしろ、既存のイラストを参考にせずに、何を参考にしてイラストを勉強するのか教えて欲しいくらいです。

自分が表現したい絵柄を生み出すために、好きな作家を参考にし、好きな部分を自分のイラストに反映させてみましょう!

コーヒーさん
コーヒーさん
誰かのイラストを参考にする」という行為は、イラストを描いていく上で切っても切れない事なんだね。

ちなみに、複数の作家を参考にする場合、「この人の描き方をとにかく参考にするぞ!」という大雑把にではなく、「パーツごと」に参考にするのもかなり良い手段だと思います。

例えば、管理人がイラストを描き始めてから数年間ぐらいは、下記のようにパーツごとに参考先を変えていました。どれも自分のイラスト人生を確立することになった大好きなクリエイターです…。

  • 顔や髪型の描き方→「キノの旅」挿絵担当の黒星紅白さん
  • 瞳の描き方→「ムヒョロジ」の西義之さん、「ディスガイアシリーズ」の原田たけひとさん
  • 体、ポーズの描き方→「魔法先生ネギま! 」の赤松健さん、「ソウルイーター」の大久保篤さん
  • 色の塗り方→漫画「ゼルダの伝説」シリーズの姫川明 他たくさん…

安定してイラストを描けるようになった今、現在はこれといって明確に参考にしている作家さんはいませんが、他の方が描かれるイラストを見ている時に、「あ!ここの描き方は参考になる!」と思ったのであれば、即座にインプットして自分の絵柄をアップデートしていっています。

視聴者の反応を参考にする

これは人によってデメリットが大きくなるかもしれませんが、自分のイラストに対する視聴者の反応を手掛かりにして絵柄を定めていく手段もあります。主に、自分が描きたい絵柄が複数ある方で、その中から一つに絞っていきたい方におススメの方法です。

方法は簡単。別々の絵柄で描いたイラストを、SNSやコミュニティサイトに投稿します

例えば、「主に10代女性をターゲットに描いた可愛い系イラスト」、「海外で受けそうなカートゥーン風」、この2つを描いて投稿します。そして、その2つのイラストに対しての「視聴者からの反応」を分析し、わりと評価が良い方の絵柄に決定して、それで描いていく…という方法です。

どちらの絵柄も捨てがたくて選べない→だったら、どちらがウケが良さそうなのか視聴者に絵柄を選んでもらう→反応が多かった方を自分の絵柄にしてく…。という流れです。イラストに対する反応が良いと、自然と創作のモチベーションが上がりますしね。

かげひと
かげひと
この方法を行う場合は、長期的なデータが必要です。それぞれ1枚のみ投稿しその1枚のみで判断するには、データが少なすぎます。
この投稿方法で長期間(例えば半年~1年ほど)多くのイラストを投稿し続け、そして総合的に見ていくのが大事です。

ただし、も言ったように、この方法は人によって「デメリット」が大きい場合もあります。なぜかというと、自分の判断よりも視聴者に判断を委ねる事すなわち「人の目を気にしてイラストを描いていく」という目的に変わる可能性があるからです。

そうすると、自分が楽しんで描くためにイラストを作るのではなく、視聴者の方を優先して描く→視聴者の意見を重視し過ぎて心身が披露する…ということになりかねません

あくまでも視聴者の意見は参考程度」としてとらえられる方ならまだしも、「人の目を気にし過ぎてしまい、それがイラストや心身に過度に影響する」方にはあまりお勧めしない方法です。

無理に絵柄を定めなくてもいい場合

さて、ここまでは「絵柄を定めた方が良い」事について紹介してきましたが、「私は絵柄を定めずに描いていくスタンスでいきたい!」、「商業イラストレーターで活動していきたい!」という方は、無理に絵柄を定める必要がありません

むしろ、当の管理人も「商業イラストレーター」寄りの活動でお仕事をしています。

「絵柄を決めずにイラストレーターとしてやっていけるのか?」と心配な声も出そうですが、むしろ絵柄を複数持っていたり柔軟に変更できるスキルがあることで、下記のような大きな強みが出てきます。

  • 絵柄を変更する事に抵抗が無いため、時代の流行に合わせてイラストを描くことができ、結果的に長期的なイラストレーター活動ができる
  • 依頼される仕事のジャンルの幅が、作家イラストレーターよりも広くなる
  • 「IP案件(分からない人は調べてみてね)」の仕事に向いている

逆に、絵柄を1つに絞って描いていく「アーティスト寄りのイラストレーター」として仕事を進めていく場合、現時点で売れっ子になれたとしても、絵柄の流行が廃れてしまい、5年後にはぱったり仕事が無くなる…といった恐れもあります。これはアーティスト寄りイラストレーターのデメリットですね。

かげひと
かげひと
あまり言いたくないのですが、「あれ?そういえば○○さんって、ここ数年新しいイラストを出してないよね…」的な感じで、数年後には雑誌にもSNSなどにもぱったり出なくなった…という方もいます。
プライベートな事情もあるかもしれませんが、流行が変わって自分の絵柄があまり売れなくなってきた…という理由でフェードアウトor事業を畳む方も多いです。

「どうしても絵柄を1つに定められない!」、または「商業イラストレーターとしてやっていきたい」という方は、絵柄が複数あるor絵柄を気軽に変更できることを強みにした仕事の立ち回りをすることができます。

「複数の絵柄で仕事をしていく」方への注意点ですが、複数の絵柄で仕事をするのは想像以上にかなり大変です
過去に管理人も2~4種類の絵柄で営業をしていきましたが、数ヶ月後には「依頼の都度絵柄を変更していく」スタンスに変更する事にしました。

その”実験”の結果を記した記事も、参考として掲載しておきます。

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回は「自分の絵柄が定まらない方向けのアドバイス」について紹介しました。

まず「絵柄」というのは、一般的には「自分が描く絵の雰囲気」、「自分が描く絵のタッチ」という意味で使用されます。大抵の絵描きは、自分だけの絵柄を持つことに憧れている事でしょう。

「誰しもが絵柄を必ず持つべきか?」と言うわけでもなくて、主に「作家寄りのイラストレーター」の道を進む方であれば、必ずと言っていいほど絵柄を定めるべきだと個人的に思います。

絵柄を定めておくべき理由は、主に以下の通りです。

  • この絵は○○さんという印象付けになるから
  • その絵柄で描き続ける事によって「○○を描く人」という肩書きができ、その分野から仕事が来るようになるから
  • 自分が売り込みたいターゲット先を的確に定める事ができるから

イラストの絵柄を決めたい!」「どういう風に構築していけばいいの!?」など、絵柄の作り方に悩んでいる方は、まずは下記の方法を試してみてください。

  • 一番始めに目標を定める
  • 参考にする作家を定める
  • 視聴者の反応を伺う

逆に、商業イラストレーターとして歩まれる方は、無理をして絵柄を定めなくても良いかと思います。むしろ、仕事面においてそれが強みになる場合があります

 

絵柄が決まらない期間は不安に思う事もあるかと思いますが、それを乗り越えて「これが自分の絵柄かも!」と思えるようになった時の喜びはひとしおです。絵柄が定まらずに悩んでいる方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください!

最後までご覧いただきありがとうございました!

それでは!