この記事の解説事項
●イラストレーターは、実名を一切出さずに「ハンドルネーム」だけで活動していけるの?
●実名を出さなければいけない場合について
●実名orハンドルネームで活動する事でのメリット&デメリット
無印かげひと(@kage86kagen)です!
イラストレーターや趣味でお絵かきをされている方に質問ですが、活動名はどうされていますか?
おそらく、「実名」か「ハンドルネーム」かのどちらかで活動することになると思います。その上、趣味で描いている場合だと実名で活動している方はほとんどみかけることはありませんが、イラストレーターとして働いている方は実名で活動されている方が多いと感じます。
とは言いつつも、ここ数年ではハンドルネームのみで活躍しているプロのイラストレーターの数も増えてきており、一昔前のような「苗字 名前」といった形式にとらわれることない名前で命名している方も多くなりました。
ハンドルネームで活動している理由としては、「ただ単に好きな名前で活動していきたい!」「なんかかっこいいから」という方もいれば、実名で活動することができない事情によってハンドルネームで活動している方も少なからずいると思います。(裏でこっそり副業してる方とか…)
しかも今のご時勢だと、実名で活動することによって、ひょっとすると過激なファンからの余計な詮索(凸られたり)という事も起こり得ますからね。
ところで、実名ではなくハンドルネームで活動していきたい場合、実名がバレることなく活動していけるのでしょうか?仮にどうしても実名を報告しなければならない場合、どういった時に実名を出すことになるのでしょうか?
ということで今回は、「イラストレーターは実名を出さずハンドルネームだけで活動していけるの?」という事についてご紹介したいと思います。
- イラストを仕事としていきたいけど、実名ではなくハンドルネームで活動していきたい!
- 実名を伝えないといけない場面って、どんな時?
などなど、どちらかというとハンドルネームで活動していきたいと考えている絵描きさん向けの記事になっています。上記について気になる方はぜひ参考にしてみてください!
もくじ
イラストレーターの活動名について

冒頭に少し戻りますが、みなさんはプロの絵描きとして活動していく際、「活動名」について深く考えたことはありますか?
特に問題無い場合は実名でいく人もいますが、本名を出したくない時はハンドルネームで活動していくという方向性もありだと思います。
個人的な感覚ですが、数十年前では実名で活動している方が大多数だったと思われます。例え実名で活動しなくても、「苗字 名前」みたいに、「○○ ○○」といった日本特有の名前の形式をニックネームにして活動している方も多かったと思います。
しかし、ネットの普及やサブカルチャーが発展していくにつれて、上記の型にとらわれることなく好きな文字列で活動している方が増えてきています。
例えば、「いちご」とか「flower」とか「pako」とか、はたまたぱっと見では意味がわからない名前なんかもあります。現在では、「○○ ○○」といった形式以外の名前で活動している方は、おそらく半分以上では?と、個人的に感じています。
ただ、どちらにせよ「あまりにも変な名前(公序良俗に引っ掛からない名前)」でなければ、どんな名前であっても活動していけると思います。結局は名前ではなく「自分のイラスト」次第ですからね。
「いや!名前は実名じゃなきゃ絶対ダメだ!」「”ぱんけーき”という活動名だなんて馬鹿げている!」というステレオタイプな方もまだまだいますが、そういった考え方は時代が進むにつれてどんどん和らいでいると思います。
イラストレーターは匿名で活動できるの?

イラストレーターとして活動していくにあたり、中には「実名を出すのは絶対避けたい!ハンドルネームだけで活動していくことはできないだろうか?」と考えている方もいるはずです。
実際、管理人も今のところは上記のような考えで活動しています。
果たして、イラストレーターはハンドルネームで活動し続ける事は可能なのでしょうか?管理人はイラストレーターとして約2年ほど活動してきましたが、簡潔に言うと今のところはこんな感じです。
「水面上では可能、水面下では不可能」
表面上ではハンドルネームだけで押し通して活動することができそうですが、次項はこちらについて詳しく説明したいと思います。
実名を出さないといけない場面

「要するに、ネット上や対面上ではハンドルネームで押し通せるけど、水面下、裏では無理ってこと?」…という解釈にはなりますが、これは自分の活動の仕方、方向性、働き方によっては、水面下では必ず実名を出すことになります。
実名を出さなくても良い場面というと、例えばSNS上で活動したり、サイトに来た来訪者と電話&メールで調整したり、実際に対面したり、お仕事実績を報告する時などは、ハンドルネームで貫き通すことが可能です。
自分が犯罪を犯してニュース等に載らない限り、表面上では実名をさらすことなくハンドルネームで活動していくことができます。
では次は、実名を出さなければいけないシーンについて順に取り上げてみたいと思います。
①取引先が「法人」の場合
取引先が会社などの「法人」といったように、「会社に雇われているタイプのイラストレーター」または「会社からイラストの依頼があった場合のフリーランス」などの方の場合、会社は雇った(依頼した)イラストレーターにお金を支払ったら、「支払調書」という書類を税務署に提出することになります。
会社はこの支払調書を作成する義務があるため、この書類に記載するためにイラストレーターの実名やマイナンバーが必ず必要になってきます。この場面で、その取引先に必ず実名を提供することになります。
(「支払調書の写し」の書類があると、イラストレーターにとっては「確定申告」の計算がしやすくなるメリットがあります)
PIXTAではクリエイター全員に支払調書をWeb上で渡してくれるものの、AdobeStockではクリエイターからの問い合わせが無い限り発行してくれません。
そこで、「じゃあ、会社の依頼を請けずに全て個人依頼のみ仕事をしていけば、実名はぜったいバレないってことだね!」と思う方もいるかもしれませんが、イラストのお仕事を全て個人依頼のみで請け負っていく場合、おそらくイラストだけ生活する事はきついです。
個人依頼の場合だと、頂ける報酬の幅がどうしても狭くなりがちです。かといって、量を増やすにしても描ける枚数は限界があります。副業ではなく本業としてイラストを仕事にしていきたい場合、会社からの依頼ももらえるようにしていかないと、近いうちに挫折して廃業…なんてことにもなりかねません。
②契約書をもらう時や請求書を提出する時(実は任意)

他に実名を提出する場面として挙げられるのは、依頼を行う前に取り交わされる「契約書」についても、個人や会社によっては「ハンドルネームだけじゃなく本名も載せて!」という方もいます。会社によっては、ハンドルネームだけだとやっぱり信用できない場合もありますからね。
ただし、よく勘違いされがちですが、「契約書」や「見積書」、「請求書」などといった書類に、「本名を出さなければいけない」という法律は定められていませんので、ぶっちゃけこれらの書類はハンドルネームで押し通すことが可能です。(ちなみに、「契約書には住所も必ず表記しなさい!」という記述もありません。)
とは言いつつ、よほど実名を公開したくない人でない限りは、あまり深く考えずに実名を提出するのがいいと思います。これはお互い何かトラブルが合った時に対処しやすくなったり、依頼者から信頼を得る事ができるからです。
③開業届を提出する時
イラスト業を本格的に仕事にしていく場合、税務署に「開業届」を提出することで、国に支払う税金が控除できたり、仕事に使用するパソコンやソフトを「経費」として計上することができます。
イラストレーターを始めるにあたって、この開業届を出す方が大半だと思いますが、その開業届の書類に実名やマイナンバー等を記入する必要があるため、ここでも実名を使用することになります。
そもそも、これはイラストレーターとして活動する前の事前準備の話にはなるため、ハンドルネームはあまり関係ない(むしろ”屋号”として登録する際に記載する)かもしれませんが、参考として記載しておきます。
ちなみに、これらの場面以外だったらハンドルネームを押し通して活動していく事が可能です。クラウドソーシングサイトで活動するにしても、本名はクラウドソーシング運営に教えなければいけないものの、購入者に伝わることは一切ありません。
※インボイスの登録番号でも実名がバレる
補足ですが、ここ数年フリーランスの間でかなり話題となっている「インボイス制度」に関しても、実名が必ずバレてしまう箇所があります。それは、「インボイス制度の登録番号」を検索された時です。
どういうことか簡単に説明すると、フリーランスがインボイス制度に登録すると「適格請求書発行事業者」になるのですが、その申請が認められた時に発行される「番号」の事を、俗に「インボイスの登録番号」と呼びます。
この番号の信ぴょう性を調べる方法として、「国税庁」のサイト内で検索をかけることができるのですが、その検索結果には「登録番号」、「登録年月日」と同時に「本名」が表示されることになります。(屋号(ハンドルネーム)ではなく”本名”です!!)
そのため、ハンドルネームで活動する人が多い漫画家やイラストレーターにとっては「表面化」に絶対出したくない名前が表示されることになるため、これが理由でインボイスに登録する事をためらう方もいるほどです。簡単に身バレされてしまいますからね。
現時点では一括ダウンロード機能が削除され、検索機能では「インボイス番号」、「インボイス登録日」、「本名」までの公開に留まっておりますが、「本名」の公開を強制するのではなく、任意で「屋号」を表示できる機能に変更してくれたら、身バレが防げて助かるのですが…。
ちょっとした補足もありましたが、こういったことから、「水面上では可能(SNS、個人取引、クラウドソーシング)、水面下では不可能(法人相手には、法律からの観点からどうしても実名を教えなければいけない。イラストの調整自体はハンドルネームでOK)」と言えます。
まとめ
- 取引先が「法人」だった場合、会社が国に提出する書類の兼ね合いで、必ず「実名」を提供しなければならない。
- 契約書や請求書についても、会社からの要望によっては実名を記載する必要がある。
- 屋号名をハンドルネームで登録する時に提出する「開業届」も、実名やマイナンバーを税務署に教える事になる。
- インボイス番号を国税庁の検索機能にかけられると、そこに「実名」が表示されてしまう(2023年4月現在)
- 逆に、これ以外で必ず実名が必要なシーンはない
銀行口座は「ハンドルネーム」で登録できる!?

確かに、報酬を銀行口座で受け取る場合、取引先に「銀行口座番号」を教える事になり、そこから取引先が振り込みをする時にATM等の画面に「口座名義」が映し出される事になります。そうなると、実名で口座を登録している方は、否が応でも知られてしまうことになりますよね。
取引先が銀行口座名義を他人にバラすことが無い限り、自分の実名が広まる危険性はありませんが、「銀行口座名義から実名を絶対にバラしたくない!」という方には、「屋号名義で口座を作れる銀行」で口座を作る方法があります。
「屋号(屋号名をイラストレーター活動名にしている人はそれ。)」で口座を作ることによって、取引先の手続き画面にも「屋号名」が映し出されることになり、実名が知らされることはありません。
個人事業主必見!屋号入り銀行口座を開設できる銀行比較
銀行口座を開設する際に、屋号を付けた名称で開設したいという方も多いのではないでしょうか?個人事業主で屋号を付けるメリットとしては、事業内容を明確に伝えることができる(○○photo studio、○○会計事務所など)ということが挙げられます。
引用元:マネーフォワードクラウド確定申告(https://biz.moneyforward.com/tax_return/basic/3586/)
ただし、屋号名で口座を作ることができる銀行は限られている事に加え、「完全に屋号名のみを口座名義」とする場合は、ゆうちょ銀行でしか作ることができません。
他には、楽天銀行や三井住友銀行でも作れることは作れますが、こちらの場合だと「屋号+代表者の氏名(実名)」の形式で指定されます。
このように、銀行口座を「ハンドルネーム(屋号)」で作ることも可能ですので、口座名義を通じて実名をバラしたくない時には、これらを利用することをおススメします。
他の手段としては、PayPalやPayPayといったオンライン決済サービスを利用する手もあります。この場合だと、自分の好きな名前に変更してやり取りが可能です。
また、銀行系だと「フリーナンス」というサービスを利用する手もあります。このサービスも屋号名で口座を制作できますが、こちらは「法人相手との手続き」のみでしか振り込みできませんので、個人相手とお金のやり取りをする場合は利用できません。
各名前で活動する時の良い所&悪い所

今までの話を簡単にまとめると、ハンドルネームで活動する方の実名は、「水面上ではバレずに活動可能、ただし水面下では不可能」という事をご紹介しました。
そもそも、実名とハンドルネームとで活動する時、それぞれどういったメリット&デメリットが起こり得るのでしょうか?
ということで、本題とは少しそれますが、活動する時に実名かハンドルネームかによって、どのような長所&短所が発生するのかを、簡潔に紹介してみようと思います。
実名で活動する時の長所&短所
メリット
- 何と言っても信頼感がある
- 「下手なマネはできない」「ちゃんとしなきゃ」という自制心が生まれる(人によるけど)
- 名前を使い分ける手間が無い
デメリット
- 実名で活動するため、何かトラブルや犯罪を犯してしまった時、イラストレーターとしての復帰がかなり難しくなる可能性がある
- 過激なファンから過剰に詮索される可能性がある(俗に言う「凸られる」可能性がある)
転じて、女性が実名で活動する場合、男性と比べると「プライベートまで詮索される可能性」が高いので、こういった観点にも留意する必要があります。
HNで活動する時の長所&短所
メリット
- 好きな名前で活動することができる(親しみやすい名前、覚えてもらえやすい名前を付ける事が可能)
- 特にネット上の活動だと、本名を完全に隠して活動することもできる
- プライベートと仕事を切り離して活動できる意識ができる
デメリット
- 信頼を構築するのに時間がかかる(特にフリーランスイラストレーターにとっては、”信頼”はとても重要)
- 特に会社の方からの信頼がイマイチ薄い場合があり、会社から仕事の話が来る確率が少なくなる人もいる
ハンドルネーム(HN)での長所&短所は、実名とほぼ反対です。実名が明かされない分個人の特定もされにくくはなりますが、その引き換えに「依頼者からの信頼感」は、実名と比べるとやはり薄くなってしまいます。
名前の途中変更はよくよく検討?

補足になりますが、たまに自分の活動名を実名→ハンドルネームに変えたり、別のハンドルネームに変更する方もいますが、変更する場合にはよくよく考えてから変更する事をお勧めします。
なぜかというと、解明することにより認知度が大きく下がってしまいがちだからです。
熱烈なファンであればすぐに順応してくれるかもしれませんが、それほどでもない&ちょっと気になるからフォローしてるよ程度のファンが多い場合は、名前を変えられると「…誰だっけ?」になってしまい、一時的にファンが減ってしまう恐れがあります。
世間的に有名であれば影響は少ないと思いますが、イラストレーター成り立ての早い時期に名前の変更を行ってしまうと、ゲームのリセットボタンを押すかのように認知度が初期化されるケースも多いです。
そのため、名前を命名する前に、途中で変更しなくて済むようよくよく検討してつけていくか、変更したかったとしても事業が軌道に乗り始めて少し経った後などに変更を検討すると、知名度を再度積み重ねていく苦労が軽くなります。
途中で活動名を変える事自体は容易ですが、先の事をよく検討した上で改名をしていく事をお勧めします。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、「イラストレーターは実名を出さずハンドルネームだけで活動していけるの?」という事について紹介しました。
最近は、実名よりもハンドルネームでイラスト活動を行っている方が大半ですが、時として実名を出さなければいけないシーンも存在します。
●実名が必要なシーンの例
- ①取引先が「法人」の場合
- ②契約書をもらう時や請求書を提出する時(実は任意)
- ③開業届を提出する時
このことから、
「水面上では可能(ネット上や対面上、個人依頼での調整など)、
水面下では不可能(税の書類関係などでは実名を提出しないといけない)」
ということになります。
補足になりますが、実名orハンドルネームで活動する時のメリット&デメリットは、以下の通りになります。
●実名で活動する時の長所&短所
メリット
・何と言っても信頼感がある
・「下手なマネはできない」「ちゃんとしなきゃ」という自制心が生まれる
・名前を使い分ける手間が無い
デメリット
・実名で活動するため、何かトラブルや犯罪を犯してしまった時、復帰がかなり難しくなる
・過激なファンから過剰に詮索される可能性がある(俗に言うと「凸られる」可能性がある)
●HNで活動する時の長所&短所
メリット
・好きな名前で活動することができる
・特にネット上の活動において、本名を完全に隠して活動することもできる
・プライベートと仕事を切り離して活動できる意識ができる
デメリット
・信頼を構築するのに時間がかかる(特にフリーランスイラストレーターにとっては、”信頼”はとても重要)
・特に会社の方からの信頼がイマイチ薄い場合があり、会社から仕事の話が来る確率が少なくなる
イラストレーターの活動名の途中変更は自分のさじ加減ですが、タイミングによっては「知名度」がリセットされてしまう場合があります。活動名を変更する時には、先の事を想像してよくよく検討することをお勧めします。
最後までご覧いただきありがとうございました!
それでは!