この記事の解説事項
●アニメにおける”10年ごとの絵柄の移り変わり”について
●1990年代、2000年代、2010年代(+2020年代)ごとの絵柄
●昔のアニメテイストの絵を描きたい方向けに、各年代の特徴をご紹介
無印かげひと(@kage86kagen)です!
以前、「年代ごとのイラスト絵柄の変化」について衝動的に紹介したくなり、年代ごとの「瞳の移り変わり」についてという記事を制作しましたが、こちらをTwitterで紹介したところ、多くの方から反応を頂きました。

近年の「瞳」の移り変わり。世間体に好かれる絵柄は、10年を節目に大きく変わっていくらしい。って記述を、どこかで見た。 pic.twitter.com/oYkw5SKzFI
— 無印かげひと@4月以降の納期募集中 (@kage86kagen) February 13, 2021
ということで、これにあやかり今回の記事では、「絵柄全体」に焦点を当てて絵柄の歴史を辿っていこうかなと思います。
- アニメの絵柄の歴史を辿ってみたい方
- ○○年代のようなイラストを描いてみたい方
- 狙ったターゲット層に向けてイラストを描きたい方
などなど、各年代ごとの絵柄の特徴についても事細かに説明してみましたので、イラスト制作のお役に立てれば幸いです。
それではいってみましょう!
もくじ
今流行っている絵柄ってなに?

いきなり質問ですが、現在はどんな絵柄が流行っていると思いますか?
おっしゃる通り、もしかすると今の時代は「今は○○な絵柄が流行りだ!」とはっきり言えないのかもしれません。
2020年代に突入してからは、2010年代の作画力にさらに磨きがかかった「カラフルで三次元寄り(写実的)な絵柄」が主流になるのかな?と思いきや、1990~2000年代のアニメがリメイクされる流れもあるのか、1980~1990年代のレトロ風な絵柄を好んで描く人も多くなりました。
つまり、2020年代は今まで流行した絵柄が一斉に流行りだしているのかもしれません。そう考えると、逆に現在は突出して流行っている絵柄は無いのかもしれませんね。(2021年現在)
今まで流行った絵柄がごっちゃになっている現代

先ほども言いましたが、2021年の今では1980年代や1990年代に流行った絵柄も割と人気だったりしています。いわゆる「レトロブーム」というやつかもしれません。
他のイラストレーターさんを追っかけ続けた管理人が見る限り、このようなレトロブームは2015年あたりからちらほら始まっているように見えました。
なんでそう思うのかというと、管理人は毎年発刊されている「ILLUSTRATION」(イラストレーターがたくさん紹介されている書籍)を買って読んでいますが、その中で「レトロっぽい」絵柄で描くイラストレーターが年々増えていっているように見えるからです。
2021年現在も例外ではなく、人気絶頂のアーティストのMVにも「昭和・平成レトロ」っぽいイラストが起用されていたりします。
他にもつい最近見かけたもので例を挙げると、プリンやゼリーといった食品のパッケージに、「1980年代」風の絵柄で描かれているイラストを見つけた事がありました!
こうしてみると、1990年代の絵柄が時代遅れ…とか、2020年代はこの絵!…という区別は無く、今の時代はどの絵柄もある程度需要があるということが分かります。
キャラの絵柄は10年ごとに大きく変わる

聞いた話によると、デザインというのはおよそ10年ごとに区切って変化の比較が行われることが多いそうです。
アニメの作画についても例外ではなく、1990年代、2000年代、2010年代(+2020年代)と、10年事に区切って比較している方が多いです。その有志達がまとめた記事や書籍等を見てると、やはり10年ごとにデザインが大きく変化していることが目に見えてわかります。
この「デザインは10年事に変わる」という話は、前の記事である年代ごとの「瞳の移り変わり」についてに解説していますので、こちらも合わせて読んでみてください!
各年代ごとの絵柄一覧
では、ここからは本題である各年代でよく見かけたアニメの絵柄についてご紹介したいと思います。今回は「1990年代」、「2000年代」、「2010年代(+2020年代)」の3つの時代を紹介していきます。
「この時代は髪がこんな感じだったなぁ」「服はこんな感じだった!」というように、各時代でよく描かれていた特徴をかいつまんで説明しているので、時代を象徴した絵柄を描いてみたい方はぜひ参考にしてみてください!
1990年代
●特徴的な部分
・主線は黒で描かれていることが圧倒的に多い
・”しっかり””かっちり”描いている
・キャラの主線は頬の描写もしっかり描くほどかっちり固めに描かれている。
・特に紙の毛束の描写が固め。
・全体的に色がくすんで見える etc…
1990年代に放映されたアニメといえば、「魔法騎士レイアース」、「地獄先生ぬ~べ~」、そして、最近新劇場版が完結したばかりの「新世紀エヴァンゲリオン」などが放映された時代です。
その有名なアニメに出てくるキャラクター達を見た上で上の画像を見て頂けると、「なるほどね~」と思ってくれるかもしれません。
ちなみに、「色がくすんで見える」というのは、この時代の制作環境や映像技術が大きな理由となっています。おそらくアナログ(セル画)制作によるものです。
それに加えて、当時のテレビは今と違いブラウン管でしたので、今と比べるとどうしても映像が「鮮やか」とは言えませんでした。
「色がくすんで見える」のは、これらの理由があるからだと思われます。
「昭和レトロ」や「平成レトロ」な雰囲気のイラストを描きたい方は、線画のほかにも「色」に気を付けて描写すれば、比較的簡単にレトロな雰囲気イラストを作ることも可能です。ぜひ、ご自身のイラストで実験してみてください!
2000年代

●特徴的な部分
・全体的に色が鮮やかになった
・線画に丸みを感じるようになった。
・髪のハイライトは「白」ではなく、白に近い色で塗られることが多くなった。
2000年代で有名なアニメといえば、「犬夜叉」、「銀魂」、「涼宮ハルヒの憂鬱」などが人気でした。2000年代に公開されたアニメ作品を振り返ると、日本=アニメという位置づけを世界にさらに広めていった作品が多いような気がします。
2000年代の絵柄で最も特徴的なのは、「色の鮮やかさ」です。これは、1999年~2000年にほとんどのアニメ制作会社がアナログ→デジタルへと環境を移行していった時代でもあります。そのため、「赤」は「赤」で表現することが可能となり、結果的に色鮮やかなアニメが出来上がありました。
ドローイングソフトの歴史はセルシスの歴史~『CLIP STUDIO PAINT』に至るまで
デジタルツールは1991年から作り始められ、セルに色を塗るという工程をデジタル化した『RETAS』(現在の『RETAS STUDIO』に至る原型)が完成。1993年ごろに動画大手の東映動画(現東映アニメーション)がこれを採用し、いち早くアニメをデジタル化したことにより、周囲の会社にも同ソフトが浸透。
2000年になるころには、ひととおりのアニメ製作会社には行き渡っていたという。
引用元:CELSYS(クリスタ開発元)
https://www.celsys.co.jp/special_topics/famitsu
色以外の特徴的な部分をあげると、キャラの描き方が”カクカクしたしっかりめ”から”少し丸みを帯びた線画”が目立つようにりました。
アニメの元ネタ(漫画やライトノベルなど)のイラストのキャラは線画が「カックカク」描写だったのに、アニメ化した時には「あれ?顔がちょっと丸くなった…?」という作品も少なからずあったように思えます。これは「流行に合わせて絵柄」に少し寄せる事で、より多くの視聴者を増やそうとした戦略があったかもしれません。
また、服のシワの描写についても、1990年代と比べると常に細かく描かれるようにみえました。これが1990年代のアニメの場合だと、テレビアニメ版と劇場アニメ版では服のシワへの力の入れ加減が違いました。
そうした点で見ると、2000年代はテレビアニメ版も劇場版も作画力にあまり差はないように思えます。
そういえば以前「瞳の絵柄」についてツイートしたところ、「俺の絵柄は2000年代で止まったままだ…」といったように、「2000年代」を話題にあげる意見がとても多かったです。実際、2000年代の絵柄が一番好きだという方が今でも多いようですね。
ですので、2000年代の絵柄で描く事が好きな方は、無理に2010~2020年代の絵柄に矯正しようとせずありのままの絵柄で描いても需要があるかもしれません。
イラストレーターとしての働き方によっては、流行に合わせて絵柄も微調整していかないと、流行に置いて行かれて仕事が無くなってしまう場合もあります。
特に、依頼者の要望に合わせて絵柄を変えていく「商業寄りのイラストレーター」は、時代に取り残されないように絵柄をアップデートしていく必要があります。
2010年代(+2020年代)

●特徴的な部分
・前髪のもこっ表現が少なくなった
・鼻の描き方がかなり簡略化してきた
・女性キャラについては、手の描写が気持ち小さく描かれるようになった。
・口の開き方が小さくなった。
・常にオーバーレイ描写や反射光なども描かれるようになった
2010年代では、アニメ会社はもちろんのこと、全国の絵描きさんにも「デジタルソフト」が普及していった時代です。そうした中、デジタル技術は年々進化していき、通常のテレビアニメであっても「グロー」や「オーバーレイ表現」などの描写が見られるようになりました。
2010年代は体の描写も特徴的な部分が多いです。一つあげるとすると、女性キャラの手が現実よりも一回り小さく描かれることが多くなったような気がします。
実際の女性の手を広げてみると、あごから眉付近までの顔の表面を覆えるぐらいまで、面積が広くなります(個人によります。)
年々三次元寄りの描写になっていく中、手の描写だけは「まさにアニメ」っていう感じに思えますね。
鼻の描き方については2000年代からかなり簡略化されてきていますが、2010年代からはさらに小さく描かれるようになりました。(各アニメを平均してみた感じ)
近い将来、主線の「黒ぽつ」描写すらなくなり、影のみの表現となってしまう…なんてことになるかもしれないですね..。
どの絵柄にも需要がある

さて、ここまで3つの時代の絵柄を紹介してきましたが、みなさんはどの年代に近い絵柄でイラストを描かれていますか?もしくはどの時代の絵柄が好みでしたか?
冒頭でもお伝えしましたが、2020年代に入ってからは「この絵柄が流行っている!」というような突出した絵柄はなく、むしろここ数年間での流行の絵柄に加えて一昔前の絵柄も流行っているような状態です。
転じて、今の時代はどの絵柄にも需要があると言えます。ですので、「自分の絵柄は古臭いんだ…」と嘆き、今の流行りの絵柄に無理矢理合わせる必要は無いと思います。今回の記事についても「時代によってこうやって変わってきました」という意図で執筆していますので、軽い気持ちで楽しんで頂けたら嬉しいです。
もし、特定の年齢層にターゲットを絞ったイラストや企画を展開するのであれば、今まで説明した時代ごとの特徴を押さえてイラストを制作していくと、それとなくその時代っぽい雰囲気のイラストを表現することができると思います。
クリエイターの方はぜひ試してみてください!
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、年代ごとの「絵柄の移り変わり」について、3つの時代の絵柄を用いて説明してきました。
2020年代に入ってからは「カラフルで三次元寄り(写実的)な絵柄」が目立つようになりましたが、かといってそれが流行として突出しているわけではなく、「昭和レトロ」や「平成レトロ」といった昔に流行った絵柄も人気がぶり返しているように思えます。
絵描きが趣味の方の中には、「俺の絵柄は2000年から止まったままだ…」と落ち込む人もいるかもしれませんが、落ちこむ必要はありません。むしろ、「2000年代の絵柄が好き」、「1990年代の絵柄のままで、作品をもう一度アニメ化してほしい」など、需要がありありです。
そう考えると、現在はどの絵柄にも満遍なく一定数の需要があるといえますので、無理に現代風の絵柄に矯正する必要もありません。「みんな違ってみんな良い」ですね。
将来はどんな絵柄が流行するのか楽しみにしつつ、今日もお絵かきライフを楽しんでいきましょう!
最後までご覧いただきありがとうございました!
それでは!