この記事の解説事項
●二次創作を描く時の注意点ってなに?
●二次創作を許可している個人や会社はどこがあるの?
●プロの絵描きは二次創作を投稿していいの?
●二次創作で依頼を募っていいの?
無印かげひと(@kage86kagen)です!
みなさんは「二次創作」というものをご存じでしょうか?イラストや楽曲制作など何かしらの制作物を制作した事がある方なら、誰しもが聞いたことがある言葉だと思います。
版権元のキャラクターなどを自分で描く二次創作というのは、昔から行われてきた文化です。この二次創作の勢いはネットの普及が進むとともに、急速に広まっていきました。
大好きな版権を自分の絵柄や自分の解釈で描くというのは、とても楽しいことですよね。でもその一方で、二次創作を行う方は最低限のルールを知っておく必要があります。
大好きな作品を二次創作してアップロードする。今やみんなが当たり前のように行っていますが、これは版権元によって「違法行為」になるかも…!?
ということで、今回は「版権によってはそもそも禁止?二次創作イラストを描く時の注意点」についてご紹介したいと思います。
- そもそも、二次創作はやっていいの?
- 二次創作を行うにあたっての注意点
- プロの絵描きは二次創作イラストをあげてもいいの?
- 二次創作で依頼を募っていいの?
などなど、二次創作を行う方に気を付けて頂きたいことについてを、情報源を交えながら解説していきたいと思います!
※今回の記事は専門家からの意見ではなく、あくまで一個人の意見をまとめた記事になりますが、根拠となる「著作権」や「二次創作ガイドライン」を参考にしながらまとめています。今回の記事を参考にしていただいた上で、最終的にはご自身で調べてもらうようお願いします。
もくじ
二次創作について

二次創作とは、「元ネタ(原作元)」を参考にし、自分で制作した作品の事を指します。これに似た言葉として「一次創作」という言葉もありますが、これは「元ネタ(原作元)」そのものの事を指します。
例えると、漫画「鬼滅の刃」に登場するキャラクターを自分の手で描いたり、ゲーム「東方project」で使用されている楽曲を自分でアレンジしたりする行為、これらを「二次創作」と呼びます。
こういった二次創作物は、「みんなに自分の気持を共感してもらいたい!」あるいは「ちやほやされたい!」というちょっとした欲などがきっかけで、ネット上で作品を公開する人が増加しました。その結果、近年では二次創作が経済を大きく回しているほど、二次創作活動が活発に行われています。
二次創作を利用した活動例を挙げるとすると、「同人誌」とか「コスプレ」などが該当しますよね。
そもそも二次創作はやっていいの?

こうして経済をも大きく回している二次創作ですが、そもそも二次創作は勝手にやっていいのでしょうか?
はっきり言ってしまうと、答えは「違法」です。
これは「著作権法」という法律の話に発展します。みなさんが描くイラスト(完全なオリジナル)というのは、制作した時点で制作者自身に「著作権」が生まれますが、この著作権を勝手に使うことは法律上で「違法」になります。
著作権とはどんな権利?
著作物を使うときは、著作権を持っている人から許可を得る必要があります。
引用元:みんなのための著作権教室(http://kids.cric.or.jp/intro/01.html)
例えば、以下のようなことがあったとします。
Aさん「既存のキャラを使用していない、ストーリーやキャラクターを自分で考えたオリジナルの漫画を描きました!」
Bさん「Aさんの漫画に登場するキャラクターを、Aさんの許可を取らずに使用して、自分なりに可愛く描きました!」
この場合、Aさんが作成した漫画の著作権は、制作者であるAさんに発生します。
この著作権は、原則として「著作権を所持している人の許可を得ないと、二次創作やコピーが作れない」と法律で定められているため、「Aさんの許可を取らずに自分なりに可愛く描く」といったBさんが行った行為は、「違法」となります。
実は、こういった行為がネット上で毎日当たり前に行われていますが、版権元から許可を得ていない、もしくは「二次創作OK!」と表記していない版権元の作品を二次創作して投稿することは、法律上では全て「違法行為」という判断になります
こちらのツイートでも、二次創作について弁護士監修で分かりやすく説明されています。
【弁護士監修】
二次創作したけど著作権侵害にはならない…よね???と思って法律のプロに訊いてみたら普通にアウトだったまとめ pic.twitter.com/fd0ooBU99h
— はこしろ@イラストレーター (@white_cube_work) May 9, 2020
「二次創作OK」と表記している著作物であればOK

いえいえ、そんなことはありません。あくまで「二次創作を許可をしていない」版権を描く場合が違法になるだけですので、版権元で「二次創作OK!」と記述してあれば、その作品は二次創作をしても問題ありません。
版権元が「二次創作OK」かどうかを知るためには、その会社や個人が掲げている「二次創作ガイドライン」や「規則」などを確認する必要があります。いちいち確認するのは面倒くさいと思いますが、何かを制作するまえに事前にルールを一読することはとても大事です。
このガイドラインの確認についてですが、主に下記のような場所に表記されていることが多いです。
- 版権元のサイト(特に企業の場合は、ホームページ下部に載せている場合が多い)
- SNSなどのプロフィール欄を見てみる
- ツイート内から検索する(めちゃ大変だけど)
これらの方法で確認して「二次創作OK」の表記があれば、「二次創作を描いてもいい」と正式に許可を出している事になります。そうすれば、「今描いているキャラが違反だったらどうしよう…」と怯えながら制作することは無くなることでしょう。
大手の会社の場合だと、大抵は二次創作についてのガイドラインの記述を載せている場合が多いです。例えば、VOCALOIDで有名な「piapro」の現在の二次創作ガイドラインは、以下のように記述されています。
キャラクター利用のガイドライン
PCLでは、非営利かつ無償の場合に限って当社キャラクターの二次創作物の利用を許諾しています。
ご利用いただける例
個人や同人サークルなどによる、非営利かつ無償の利用引用元:piapro「キャラクター利用のガイドライン」(https://piapro.jp/license/character_guideline)
ちなみに、ピアプロでは「クリエイター応援」を目的として、2021年6月からは「ピアプロキャラクターを利用したYouTube投稿動画の収益化」について、正式にOKというニュースが発表されました。
[参考サイト]初音ミク公式ブログ「ピアプロキャラクターズを使用したYouTube投稿動画の収益化を解禁!」
ただでさえこういった問い合わせに対応で追われている(であろう)中、「二次創作を黙認」している会社に「NG」判断させてしまうきっかけにもなってしまい、そのジャンルの二次創作そのものが出来なくなる可能性があります…。
朝起きたら、Twitter一位。驚いた!
・調べたら、ウマ娘は全年齢対象なので、全年齢対象となる2次創作はどうぞ。(R指定になるようなものはダメ)
・作品や運営のことはわからず、これ以上は答えようがないので、運営会社から他にお願いやガイドラインがあれば、それに従ってほしい。これで終了。 pic.twitter.com/oe161hoCkf— 西山茂行 (@seiun0005) April 23, 2021
二次創作OK&NGを示している企業

最近は、二次創作がもたらす影響力を鑑みて、二次創作について記述してくれる版権元が多くなってきました。そこで一部ではありますが、二次創作について明確に記述しているorしていない会社や企業を一覧にして紹介したいと思います。
二次創作OKを出している版権元
・piapro(ボーカロイド)
・ANYCOLOR株式会社(にじさんじ)
・株式会社miHoYo(崩壊3rd、原神など)
・株式会社カラー(エヴァンゲリオン)
・株式会社カプコン(モンスターハンターなど)
・Cygames(ウマ娘など)
etc…
※ただし、商用利用、収益化に関する二次創作、その他詳細については各ガイドラインを必ず参照してください
※また、コンテンツ先によっては(主にVtuber系)、「描いて頂いた二次創作イラストは、イラスト制作者の許可なしでサムネ等に使用する場合があります」という記述を載せている会社もあります。もし、自分の描いたイラストを勝手に使用されたくない場合は、イラストを投稿する際にその旨も一緒に登記する事を推奨します。
二次創作物のネット投稿や配布禁止の版権元
・株式会社サンライズ(ガンダムなど)
・株式会社プロダクション・アイジー(攻殻機動隊など)
etc…
※あくまで「ネット上への投稿」や「他人への配布禁止」の場合の二次創作を指す。個人で楽しむ二次創作は禁止…とまでは言っていません。
そもそも二次創作NGの版権元
グレーゾーンや記述が無い、または黙認の版権元
・任天堂(ゲーム実況やゲーム紹介動画等については明確にガイドラインが定められているが、ファンアート(二次創作)に関しては明確な記述がされていない。)
・小学館(二次創作についての記述無し。ただし、過去に「著作物侵害」で同人作家を訴えた実績あり。が、後に二次創作を許容?するような出来事があった。(詳細は各自で調べてみてください…))
・集英社(ファンアート(二次創作)に関しての記述無し。ようするに黙認。)
etc…
先ほど紹介したのは、どれも大手企業や団体が著作権を持っている場合です。個人規模で制作したイラスト&作品、ボーカロイド楽曲についても同様で、二次創作をやっていいかどうかの記述については製作者によってまちまちです。
ただ、「楽曲(特にボーカロイド関係)」に関しては注意事項があります。
「楽曲」と「ジャケットイラスト」、「MVの映像」は、制作者ごとに著作権があります。「楽曲はご自由にお使いください!」とオフボーカルバージョンが配布されたていたとしても、MVについての使用許可がない場合は勝手に使用することはNGです。
二次創作禁止!と公式で表記している著作物に関しては、無用なトラブルを避けるために少なくとも「ネットへの投稿」や「他人への配布」は控えておいたほうがいいかもしれませんね。
プロは二次創作をやっていいの?

「プロは二次創作をやっていいの?」という疑問は、イラストレーターやイラストを仕事として収入を得ている方にとっては、おそらく一番気になるところだと思います。
こちらも法律やガイドラインがルールの大元になるため、版権元で「二次創作OK!」と書いてあれば、趣味の範囲内で二次創作イラストを描いてもありだと思います。
ですが、趣味を超え仕事の一環として描く場合は話が違ってきます。そのため、プロとして二次創作物でお金の取引を行う場合は「商用利用」の記述にも注目しなければいけません。
商用利用とは、「営利目的」でコンテンツを利用する事を指します。要するに、お金を得ることが目的の場合です。逆に、利益が発生しない又は売り上げ目的ではない理由で制作する場合は、「個人利用」、「非商用利用」という言葉になります。
ちなみに、ほとんどの版権元では、商用利用や事業性の高い営利目的での二次創作を禁止しています。
管理人が知る限りだと、(個人のみに対して)営利目的とした二次創作を正式に許可しているところは、ゲーム「東方project」を作ったサークル「上海アリス幻樂団」のみです。
東方Projectと二次創作
イラスト、同人誌、同人ソフト、動画、アレンジ音楽、イベント、日本酒、などなど、
東方Projectを題材とした二次創作は多岐に渡ります。ZUNさんはルールの範囲内で二次創作を公式で許可しています。
(※ 二次創作を行う際は、【東方Projectの二次創作ガイドライン】をご一読下さい。)ZUNさんは二次創作に対しては「自己責任でやってもらって良い」と言うスタンスです。
引用元:東方よもやまニュース(https://touhou-project.news/touhou_project/)
これを踏まえると、「個人依頼者→イラストレーター」に対しての二次創作依頼は「事業性の高い営利目的」に該当するかどうかもよく分からない状態です。教えて専門家さんm。)
ですので、クラウドソーシング上などの金銭が発生する場所で、「仮面ライダーに登場するキャラクターのイラストを描きます!」などといった二次創作依頼を絵描きが募るのは、完全にアウトになります。(株式会社東映はそもそも二次創作NGです)
ポートフォリオへの使用は版権元によってはOK

イラストレーターの中には、「ポートフォリオ(営業の為、自分の実績や能力をまとめた作品集)」に二次創作物を載せている方がいらっしゃいますが、版権元で「二次創作OK」とあるのであれば載せても大丈夫(だと思います)。
実際、ここ数年は「IP案件」といって、既存の著作物を利用し、絵柄をそのままそっくりに描いたり、アレンジしたりするお仕事も盛んに取引されてきいます。そういったIP案件を獲得したいのであれば、ポートフォリオに載せるのも一つの手だと思います。
※IP・・・「知的財産」のこと、価値のある情報、ブランド化された著作物。「ポケモン」や「ONE PIECE」、「ドラクエ」などといった、世界的にブランドとして認知されている規模の著作物は「大型IP」と言われることがある。
ゲーム関係のお仕事を獲得したいのであれば、二次創作物をポートフォリオに組み込むのもいいかもしれませんね。
二次創作を描く時はガイドラインを一読すること

さて、ここまで二次創作について説明してきましたが、二次創作イラストを描く時は、なるべく版権元の二次創作ガイドラインを参照することをお勧めします。版権元によって「二次創作OK」だったり、「営利を目的としない二次創作であればOK」などなど、規約はまちまちです。
何はともあれ、版権イラストを描く際には、二次創作や著作権に関する知識を身に付けておいたほうがおススメです(というより、一読しましょう)。下記に二次創作や著作権について分かりやすく説明しているサイトをいくつか紹介しますので、こちらも参考にしてみてください!
MIRACRE「ちゃんと知りたい 二次創作。」
ベリーベスト法律事務所「二次創作は法律違反になる? 行為の解釈と著作権法違反のポイントを解説」
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、「版権によってはそもそも禁止?二次創作イラストを描く時の注意点」についてご紹介しました。
普段何気なく描いている二次創作物ですが、版権元の「二次創作ガイドライン」によってはネットでの公開を禁止していたり、そもそも「二次創作禁止」と表記しているところもあります。
特に、イラストレーターやイラストを仕事している方は要注意。二次創作自体は良くても「二次創作を利用した商用利用(個人の範囲を超えた営利目的)」は、版権元のガイドラインによって許可の範囲が違います。
版権元の規約によりますが、ポートフォリオに「二次創作OK」の版権元の版権イラストを載せることは可能です(だと思います)。最近はIP案件も多くなってきていますので、そういった道に進みたい方は二次創作イラストを自分の作品集に組み込みのも一つの手かもしれませんね。
補足ですが、二次創作を勝手に行ったことによる「著作権侵害」というのは、著作権元から訴えが無い限り提起できない「親告罪」という犯罪です。「二次創作について規則が載っていないけど、みんなが描いているから」という理由で描くのもよいですが、著作権元から訴えられれば、負けは確定となります。
二次創作ガイドラインが設定されていない作品を描く際は、「自己責任」を念頭に置いて二次創作活動を行って頂ければと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました!
それでは!
※今回の記事は、専門家の意見ではなく一個人の意見をまとめた記事になります。根拠となる「著作権」や「二次創作ガイドライン」が第一ということを念頭に置いて頂いた上で、今回の記事を参考にしていただければ幸いです。