この記事の解説事項
●「使用してはいけない」or「使用には注意を払うべき」なモチーフや図形ってなに?
●どうして使用してはいけないの?
●使ってはいけないモチーフの一覧
無印かげひと(@kage86kagen)です!
絵描きのみなさんに質問ですが、みなさんはイラストで描くモチーフについて”注意”を払って描いた事はありますか?
そんな事なんて全然気にせず描いている方が大半だと思いますが、実はイラストの内容や構図がきっかけで、思わぬ「炎上」に繋がったりすることもあります。もしかすると、既にそういった現場をSNS上で目の当たりにした方もいるかもしれませんね。
そこで今回は、「これを使ったら炎上!?使用していはいけないモチーフや図形、注意すべきモチーフなど」についてをご紹介したいと思います。
今回はどちらかと言うと、「常識的にこのモチーフは使用を控えた方がいい、もしくは細心の注意を払って使用した方がいい」という、割と”強め”な感じで紹介しています。ただ、行きつくところはどうしても”本人の自由”というのもありますので、使用の判断はこの記事を読んでいるみなさんにお任せします。
主に、イラストを生業としているイラストレーターや絵師の方は、一度でも目を通しておくことをおススメします。
もくじ
どんなものがタブー?

そもそも、「これは描いたら危ない!描くとしても最新の注意を払って!」といったタブーなモチーフには、何か大きなくくりはあるのでしょうか?
詳しくは次項から説明しますが、ジャンルごとに分けるとすると、以下のような内容のものを描く場合は細心の注意を払う必要があります。
- 宗教に関するもの・図形
- 国際法に該当するもの(国際法で禁止されているもの)
- 過去の情勢によって世界各国で使用禁止を発表された物
- (政治的なもの)
①~③に関しては、絶対に使用してはいけないモチーフ、もしくは絶対…とは言いきれませんが、描いたイラストの使用先によっては「タブー」に該当するモチーフです。
最後の④に関しては、「政治的活動」に関連するため、やはり避けるべきジャンルです。
どんな場所でも活躍している無料素材サイト「いらすとや」においても、「政治的な利用に関しては利用できません」と明言しています。
政治的な活動に利用できますか?
選挙運動、また特定の個人や団体を批判する目的には利用できません。備品や設備の説明など、政治的な主張を行わない一般的な内容であれば問題ありません。引用元:いらすとや(https://www.irasutoya.com/p/faq.html)
なぜ使用してはいけないの?

先ほど挙げたものは、なぜ使用してはいけないor注意して取り扱うべきなのでしょうか?主な理由を以下の通り簡潔にまとめてみました。
- それが原因で、トラブル・争いの火種・炎上が起きる可能性があるから
- そのマークを使用してしまうことで、真に使用を必要としている団体に迷惑がかかるから
- 過去に起きた戦争を想起させるから
他人との思想が異なることでトラブルに繋がる、争いの火種になる…という観点で想起されやすいのが、「宗教問題」だと思います。
この宗教に関しては、日本国内ではあまり意識されていないのが現状です。例えば街角インタビューなどで「あなたはどの宗教ですか?」という質問に対し、「えーと、何も信仰していないから、無宗教…?」と答える人も多いんだそうです。
しかし、宗教はひとたび海外に出ると、1ヶ月間断食するイベントがあったり、これが原因で紛争を起こしたりなど、宗教が文化や歴史、日常生活に深く結びついている国が大半です。そのため、宗教は海外では割とセンシティブな内容となっています。
こういった現状の中、各宗教のマークをモチーフにしたイラストを描き、それをSNSに投稿してしまうのは、イラストの内容によってはその宗教を信仰している人、もしくは反対している人になんらかの影響を与える可能性があります。
宗教を一例にして「なぜ使用してはいけないの?」の理由を述べてみましたが、他のタブーとされているモチーフについても似たような理由があるため、これらはイラストのモチーフとしての使用を控える事をお勧めします。
使ってはいけないモチーフ

ここからは本題になりますが、使用禁止やタブー、使用に最新の注意を払うべき「モチーフ」、「マーク」、「内容」についてを、下記の通りまとめてみました。
主にイラストレーター・絵師、デザイン業など、クリエイター業を生業としている方は、参考にしていただければと思います。
赤十字マーク
この白地に赤い十字のマークは、世界最大の人道支援のNGOである赤十字に関係のある活動にしか使用を許されていないマークなのです。
これはジュネーブ条約や日本国内では『赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律』、『商標法』などの国内法によって厳密に定められています。
ですから、このマークが薬箱や赤十字以外の病院やクリニックの看板、あるいはレスキュー隊のユニフォームなどに描かれていれば、それらは全てジュネーブ条約違反なのです。
![]()
引用元:日本赤十字社(https://www.osaka-med.jrc.or.jp/aboutus/international/redcross.html)
このマークは誰しもが一度は見たことがあると思われます。日常に馴染みのある図形ではありますが、実はこのマークは関係者以外は絶対に使用してはいけないマークです。これは、世界的に定められています。
簡単に説明すると、戦争や紛争などで傷ついた人達のために活動する方達(救護員、衛生部隊など)が掲げるマークであり、紛争地域でもこのマークがあるテントや船に対して攻撃してはいけないとなっています。
故に、この「白地に単一色の赤の十字」のモチーフをイラストに使用する事は、絶対にしてはいけません。
記憶に新しい話だと、とあるアーティストのグッズにおいて、このマークに酷似したデザイングッズが販売されそうになったことがありましたね。開発するデザイナーであれば知っておいておかしくはない事だと思うのですが、なぜこのデザインが採用されたのかが不思議でたまらないほどです。
椎名林檎のアルバム関連グッズに批判の声 ヘルプマークに酷似、障がい者男性「誤解されることへの不安大きい」
シンガーソングライター・椎名林檎さんが11月30日(水)に発売するリミックスアルバム『百薬の長』の関連グッズが、「ヘルプマーク」「赤十字マーク」に酷似しているとして、Twitterを中心に批判が寄せられている。
引用元:Yahoo!JAPANニュース(https://news.yahoo.co.jp/articles/21b16529f7fcea83e54e4c79011c2caca149bc31)
ちなみに、同じ理由で「赤新月」、「レッドクリスタル」と言われている図形の使用も禁止されています。イスラム教国では赤十字ではなく「赤新月」が用いられていることから、同様に禁止されています。こちらのモチーフを知りたい方は、先ほどの引用のURLから、もしくは画像検索をかけてみてください。
ハーケンクロイツ
20世紀以降にドイツで民族主義運動のシンボルとされ、1920年にナチスが党のシンボルに、1935年にはドイツ国旗に採用した影響により、ナチズムやネオナチのシンボルとも見なされる事が多い。
![]()
引用元:Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%84)
こちらのマークは、義務教育を通って来た方なら一度は勉強した内容だと思います。「ハーケンクロイツ」とは、ナチス・ドイツが用いたシンボルの一つであり、上記のような画像のマークのことを指します。このシンボルは昔ナチスの党章として採用され、軍隊や政府機関の旗や紋章にも使用されました。
このマークは、歴史的な背景(第二次世界大戦)が原因で、世界各国で法的に禁止されています。そのため、このマークを利用したデザインをしてしまうと、「こいつ正気か?このマークを使うなんて非常識的過ぎる!」と言われてしまうほどかもしれません。
加えて、万が一このマークを使用すると、「ナチスを支持するグループや団体」の一員とみなされる恐れがあるそうです。
このマークで思いつくものと言えば、日本国内における「寺」の地図マークかと思います。パッと見だとかなり似ていますし、このマークを逆向き&45度回転したものがハーケンクロイツになっちゃいますからね。
もちろん、この地図マークの寺とハーケンクロイツには、まったくつながりはありません。そももそも、「寺」マークになった由来としては、仏教の「サンスクリット語」が起源と言われています。
このような歴史的背景から、「ハーケンクロイツ」は絶対に使用してはいけないモチーフです。それでも使用しようと考えている方は、自己責任を覚悟してください…。
特定の宗教団体を想起させるマーク
こちらは法によって明確に定められているわけではありませんが、宗教のマーク、または特定の宗教を想起させるようなマークをモチーフにしたイラストも、極力使用しない事を推奨します。
この理由は前項でもお伝えしましたが、思想の違いによって争いが起きる程、宗教問題というのは想像以上に深いです。そのため、その宗教だと特定できるマークを使用した場合、その宗教を信仰している、もしくは反対する方を刺激する恐れがあるからです。
大げさかもしれませんが、自分の身を守るためにも、「このマークかっこいいなぁ、あ、○○宗教のマークなんだ!かっこいいし、せっかくだからイラストに使用しよう!」という軽はずみな気持ちで使用する事は控えた方がよいでしょう。
商標登録されている家紋
法的規制がないため好きに選んで使用しても問題ないと言えますが、中には使ってはいけない家紋も存在します。知らずに使用すると訴訟される恐れも。(中略)
2万個以上あると言われる家紋で、使ってはいけない、もしくは使用を控えたほうがよいとされるのは次の5種類です。
- 商標登録されている家紋(独占家紋)
- 菊花紋章
- 桐紋
- 三つ葉葵
- 有名戦国武将の家紋
これは割と見落としがちですが、「家紋」に関しても注意する必要があります。
日本の家紋は知的財産権の保護の対象となっています。そのため、一部の家紋は著作権や商標権の保護を受けているため、無断で使用することが禁じられています。例を挙げると、皇室の紋章である「菊花紋章」などですね。
あくまでも「法令」で指定、もしくは「商標登録」されている家紋を無断で使用してはいけない話となります。
”家紋”と聞くと、イラストの二次創作が多いスマホゲーム「刀剣乱舞」を想起する方もいるかもしれません。こちらは「架空の紋」であり、それぞれ担当絵師がデザインした(であろう)ものですが、まかり間違って「現実にある家紋(しかも商標登録済みなど)」の物を使用すると炎上する可能性があります。
家紋を取り入れたイラスト制作についても、細心の注意を払って使用する事をお勧めします。
取扱いに注意すべきモチーフ

ここからは、「描く時に”過度な表現はしていないか”、もしくは”故意に貶める表現はしていないか”を意識するべきモチーフ」についてを紹介しています。「禁止!」とか「危ない!」というわけではなく、あくまでも”表現の仕方には注意してね”という余談的な話にはなりますが、こちらもご参考ください。
肌の色
昨今は「人種」に関する話題にとても敏感な世の中となっています。とりわけ「肌の色」に関しては、例え趣味としてイラストを描いたとしても、故意に誰かを貶めようと思わなかったとしても、描いた内容によっては「このキャラの肌の色は元ネタと違う!人種差別だ!」と騒ぎ立てられる事も少なくありません。
(実は、管理人もこの件で苦い思いをしたことがありました…)
そのため、肌の色を描く場合は、
- 描写を過剰にし過ぎない
- 不適切な表現を用いらない
- 人種差別的な印象を抱かせる内容は絶対に描かない
上記に注意して描きましょう。
[参考] 実際にあった「肌の色・人種」に関して問題視された版権物
・漫画「サイボーグ009」のジェロニモ・ジュニア
・ゲーム「ポケットモンスター」のルージュラ etc…
放射状のデザイン
こちらも少々配慮が必要なモチーフになります。「放射状のデザイン」を簡単に説明すると、「画面中心から放射状に広がる線」の事を指します。
一見すると何も気を遣う事が無いようなデザインに思えますが、このデザインは「一部の国民」の感情を刺激する恐れがあるデザインです。
誤解しないように補足しますと、多くの国ではこのデザインを様々な日常生活・コンテンツとして使用しています。むしろ、クールなデザインとしてこのデザインを使用しているのが現状です。
しかし、このデザインを使用した方に対して、”一部の国の国民”から批判が殺到するという現状が以前から起きています。使用している人が日本人ではなく、海外の方だったとしてもです。
このデザインは使用するな!…とまでは言いませんが、特に「白地に赤の円形&放射状」を使用したデザインを依頼された場合は、取引先と十分協議をした上で判断するとよいでしょう。(特に海外向けにコンテンツを発信する場合)
詳しく知りたい方は、「旭日旗」で検索してみてください。
【東京2020】 旭日旗をめぐる問題 なぜ禁止を求める声があるのか
競技場のスタンドで大観衆が一斉に旗を振りながら、選手に歓声を送る。これは、スポーツの国際大会では当たり前の光景だ。
しかし、その旗が一部の国にとってあまりに忌まわしいもののため、大会での使用の禁止を求める運動が巻き起こった場合はどうか。
まさにその通りのことが、日本の旭日旗と2020年東京五輪をめぐり起きている。どこより強く旭日旗を問題視しているのは韓国で、ナチス・ドイツのカギ十字と比べる政治家さえいる。
引用元:BBCNEWS JAPAN(https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-50969980)
六芒星
これは意外かもしれませんが、最近では「六芒星」のデザインについても配慮すべきという意見が増えています。
これも「宗教」絡みの話になりますが、六芒星はユダヤ教の象徴として広く知られておりますが、最近では一部の人たちが”反ユダヤ主義的な意図”で六芒星を使用することがあるためです。
日本国内ではほとんど気にしない、むしろ「ファンタジーもの」の作品として使用される事が多いですが、海外向けに展開していく場合は上記のような誤解をされる恐れがあります。
六芒星を活用したイラストを描きたい場合は、その六芒星と一緒に描くモチーフに配慮する事で、炎上を回避できる一つの方法かもしれません。
ハンドサイン
これはイラストの人物のポーズに関連する話ですが、イラストの使用先、コンテンツの展開先によっては、ハンドサインにも配慮する必要があります。
最近、「一部のハンドサインが人種差別や政治的な意図を含む」ということが何かと取り沙汰され、それらの使用を控えるよう声が上がっているのが理由です。
例えば、裏ピースはかなりの国において「侮辱」のサインとなっているそうです。日本国内では「裏ピース」描いているイラストがかなり多いですが、これを海外向けに発信してく場合は十分に気を付けた方が良いポーズと言えます。
しかしその一方で、A国では「屈辱だ!」とされていても、B国では「挨拶」の意味合いを持つハンドサインだったりすることもあります。国によって意味合いが大きく異なりますので、「裏ピースが”屈辱”の意味として知れ渡っている○○国に対して、故意的に裏ピースのイラストを展開していく」といった故意犯でない限りは、あまりガチガチに気にする必要が無い事かもしれません。
ひとまずは、「ハンドサインは国によって意味が異なる」という事を念頭に置いて制作して頂ければと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は「これを使ったら炎上!?使用していはいけないor注意すべきモチーフや図形」についてご紹介しました。主に、イラストを生業としているイラストレーターや絵師の方については、他人事ではない内容だったと思います。
「これを描いたら非難が来る!描くとしても細心の注意を払って!」といったタブーなモチーフを大きく区分すると、以下のようなものがあります。
- 宗教に関するもの・図形
- 国際法に該当するもの(国際法で禁止されているもの)
- 過去の情勢によって世界各国で使用禁止を発表された物
- (政治的なもの)
なぜ利用してはいけないor注意して取り扱うべきかは、下記が理由になります。
- それが原因でトラブル・争いの火種・炎上が起きる可能性があるから
- そのマークを使用してしまうことで、真に使用を必要としている団体に迷惑がかかるから
- 過去に起きた戦争を想起させるから
万が一これがきっかけで問題や炎上が起きてしまった場合、取引先に迷惑をかけてしまう以上に、最悪イラストレーターを辞めざるを得ない恐れがあります。
「タブーなモチーフ」については、今後の世界情勢によって増える可能性があります。特に、イラストを描いて収入を得ている方は、常に情勢にアンテナを張りつつ、取り扱うモチーフについても意識をしながらお絵かきライフを楽しんでください。
最後までご覧いただきありがとうございました!
それでは!